ヒタヒタとしのびよる影
色んな苦労はありましたが、無事永住権も取れて順調な人生を歩んでいましたが、そんな中、ある出会いがありました。
後に私の人生を大きく狂わしてしまう出会いです。
私は出勤時、毎朝同じ駅、同じ時間の電車を利用していました。シドニーは、首都圏は交通の便がよく、車がなくても何とか生活していける場所でした。大きな都市ですから。
そこに、いつも同じ時間、同じ電車で顔を合わせる人がいました。
見かけ、おじさんだと思っていたその人は、後にわかるのですが、私よりたった2歳年上だけの若者でした。いつも私の方を見て、目が合うとにっこりと笑いかけてきていました。
私は最初のうちは無視していましたが、毎日毎朝会うので、そのうち微笑みを返すようになっていました。それからは、向こうから話しかけて来るようになり、徐々に私も打ち解けて会話を交わすようになっていきました。
最初に話しかけられた言葉は、「日本人でしょう」でした。こちらでは、アジア系=中国人という結びつきが一般である中、いきなり私を日本人と当ててきたのにはビックリしました。なぜ日本人とわかったのかと聞くと、電車のマナーとか、普段の様子で日本人だとすぐに分かったというのです。嬉しく思いました。
その時の私の彼への印象は、優しそうで恥ずかしがり屋さんでした。はにかんで話する所など、恥ずかしがり屋さんなんだ、という印象を受けたのです。
よくよく考えてみると、本当に恥ずかしがり屋さんだったら、毎朝微笑みかけてきたり、話しかけてきたり、向こうから接近してくることなんてあまりないんですよね。だけどバカな私は優しくて恥ずかしがり屋さんという印象を持ちました。
その人も移民者で、レバノンから私よりも二年前に移民してきた人でした。
その時は、彼は商業用の何かの機械を作るための工場で働いていました。
真面目にきちんと働いている印象もありました。
毎朝、本当に遅刻もなく(こちらの人は結構遅刻や時間ギリギリセーフなんてのが多いので)、毎朝顔を合わせていたので、本当に真面目な青年だと思い込んでいました。最初は偶然に私を見たのでしょうけれど、これは日本人であるだろう私に目を付けたから、毎朝必死で真面目に同じ時間、同じ電車に乗るようにしていたのだと思います。
こうして、少しづつその彼と私の距離は近くなっていきました。これがヒタヒタと私に近づいてくる影だとは全くこの時は知る由もありませんでした。その時は、ただただ大変だけど、毎日が充実して息子と二人で幸せに生活していましたから。。。
知り合ってから自然に人柄に引かれて、ではなく、「日本人だから」と理由で近づいてくる男には要注意、この時は、そんな事などこれっぽっちも頭の中にありませんでした。ただただ日本人と分かってくれた事の嬉しさや、毎朝顔を合わせて話しかけてくれることが徐々に普通になっていってしまい、本当にバカな人間です。私は。
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